小説の中の登場人物ですが、非常に人気の高いフランケンシュタイン。
人気が高い故に、映画などのイメージの影響によって、元々の人物像が変わってしまっているのです。

見境なく人を襲うや、ゾンビに近いイメージもあります。
そんなフランケンシュタインの、真実の姿について見ていきたいと思います。


フランケンシュタインとは?
フランケンシュタインとは、1818年に著者シェリー夫人によって創作された小説上の架空の人物です。

原題では「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」となります。
自分の出生や容姿に悩みながら、とても人間らしく描かれているのが特徴的です。
また、1831年に改訂版が出版され、現在広まっているのはこの改訂版のものが主流です。
最初のSF小説とも呼ばれていて、人の心の機微を捉えていて、いつのまにか登場人物たちに感情移入してしまうような作品です。
多くの映画化やミュージカル化されていることから、今もなお根強い人気を誇っているフランケンシュタイン。
このフランケンシュタインについて、より詳しく見ていきましょう。
小説の中の死体から作られた怪物

小説では語られている姿を紹介します。
スイス人でドイツの大学に留学しているヴィクターは、命の研究に興味を持ち、日々研究を重ねていました。
そしていけないこととは思いながらも、たくさんの死体をツギハギしてひとつの生命体を完成させるに至ります。
つまり、人造人間の開発に成功しました。
このようにして、死体から作られたのがフランケンシュタインです。
フランケンシュタインには、心を持っていましたが容姿が醜い存在でした。
ヴィクターは恐れをなして、完成したばかりのフランケンシュタインを放置して、スイスへ戻ってしまいます。
そこから、フランケンシュタインは様々な経験をしていくのです。
理想的な人間を目指して作られた
ヴィクターは理想的な人間を目指して、人造人間を作ろうとしました。
それによって、体力的、知力的に非常に理想に近い存在となったのですが、容姿については変えることができませんでした。
身長は約2.4メートル、髪・唇は黒っぽく、対照的な白い歯と透けた黄色い肌をしていたとされています。

もとより死体を使って作っているのですから、顔色などが健康的になるとは思えませんね。
ヴィクターは完成させることに集中していて、容姿については二の次に考えていたのかもしれません。
いずれにしろ、理想的な人間ではあったものの、その容姿の恐ろしさによって、フランケンシュタインは取り残されてしまうのです。
フランケンシュタインは名前が無い
フランケンシュタインというのは、元々人造人間を作ったヴィクター・フランケンシュタインの名前です。
ヴィクターに作られた人造人間には、名前をつけられる暇もなく置いていかれてしまったので、名前は無いという設定でした。

作中では、自分に名前が無いことも悩んでしまいます。
小説の人気が出た頃、名前が無いためにヴィクター・フランケンシュタインから取って、フランケンシュタインと呼ばれるようになりました。
ですが、フランケンシュタインと呼ぶのは、一部で誤りであるともされましたが、既に多くの人に認識されているとして誤りではないとも言われています。
誤りかどうかというのは少々難しい論点ですが、作中では名前が無いということで、怪物と呼ばれることもあります。

今回は創造主をヴィクター、怪物をフランケンシュタインと表記していきたいと思います。
フランケンシュタインのあらすじ
人気の作品ですので、あらすじをご存知の方も多いかとは思いますが、ラストには触れないようにご紹介していきます。

それでも、ネタバレを含みますのでご注意ください。
※ネタバレを見たくない方はコチラをクリックすると、次の項目へと進めます。
物語は、ある青年からの手紙形式で始まります。
その手紙にはヴィクターから聞いた、ヴィクターとフランケンシュタインとのやりとりが書き記されている、というストーリーで進みます。
ヴィクターが怪物フランケンシュタインを完成させる
理想的な人間を目指して、人造人間を作ることを目指していたヴィクターは、ついにフランケンシュタインを完成させます。
ですが、完成したフランケンシュタインの容姿は醜く、恐ろしくなって逃げ出してしまいます。
1人取り残されてしまったフランケンシュタインは、理想的な人間故に生命力も強く、言語を獲得したり、多くの経験をしながら旅をします。
フランケンシュタインは迫害されてしまう
ですが、どこへ行ってもその容姿によって人々には馴染めず、迫害を受けてしまいます。
精神的にも過酷な旅を続けながらも、ヴィクターのいるもとへと辿りつくことができます。
そこで、フランケンシュタインはヴィクターにある提案をします。
伴侶を求めるが…
フランケンシュタインは、「孤独に耐えられない」とヴィクターに伴侶を作って欲しいと提案するのです。
そうすれば、二度とヴィクターや人の前に現れないとも約束します。
ヴィクターは、一度は約束を承知し女性の人造人間を作ろうと試みますが、彼の中で後にフランケンシュタイン症候群と呼ばれる気持ちが芽生えていきます。
そこから、ヴィクターとフランケンシュタインの関係が、さらにこじれたものとなっていくのです。
フランケンシュタイン症候群

実際のフランケンシュタイン症候群についてもご紹介します。
フランケンシュタイン・コンプレックスと呼ばれることもありますが、この苦悩についてはフランケンシュタインの小説が出版された後に、SF作家アイザック・アシモフによって名付けられました。
憧れと恐怖が同時にある
作中でヴィクターが陥ったのは、命の創造という非常に大きな成功への憧れの気持ちと、成功すればその生命(怪物たち)によって滅ぼされてしまうかもしれない、というジレンマに似た気持ちです。
このように、フランケンシュタインを作ることにヴィクターは悩んでいました。
また、ヴィクター自体は大学生であり博士などではありませんでしたが、マッドサイエンティストの原型となったとも言われています。
著者シェリー夫人
続いて、著者のシェリー夫人についても知っていきましょう。
日本ではシェリー夫人と呼ばれることが多いですが、本名はメアリー・シェリーです。
1797年に生まれ、1851年に54歳で亡くなっています。
このシェリー夫人自体も、運命に翻弄された数奇な人生をたどることとなります。
SFの先駆者と呼ばれている

シェリー夫人が執筆した当時は、SFというジャンルがなくSFの先駆者と呼ばれることも多くあります。
また、フランケンシュタインの小説はゴシック小説として有名ですが、ロマンス小説とされたりすることもあります。
16歳で駆け落ちをする
シェリー夫人は生まれてすぐに母親を亡くしています。
その後、父は再婚し継母ができますが、16歳ごろに出会ったパーシー・シェリーと出会い恋に落ちます。

ですが、この時既にパーシー・シェリーは結婚し、子供もいる状態でした。
そこでパーシー・シェリー(以下パーシー)は自分の妻に、メアリー(シェリー夫人の名前、以下メアリー)を本妻にして、3人で暮らしたいと提案したそうです。
なかなか本妻としては快諾できかねる提案かとは思いますが、パーシーとメアリーの交際に対して、メアリーの父が激怒し2人は駆け落ちをします。
この逃避行の間に、フランケンシュタイン城へ立ち寄っていて、フランケンシュタイン執筆にも影響を与えたとされています。
その後メアリーはパーシーの子供を身ごもりますが、その子は数年後亡くなってしまいます。
そして、パーシーの本妻は自殺し、その20日後に2人は結婚します。
メアリーは第2子を身ごもりますが、出産後またもその子が亡くなってしまいます。
自らの名前を伏せて出版
メアリーは2人の子供を授かっていますが、2人とも亡くしてしまっています。

当時は今よりも、子供が亡くなってしまうことが多かったのでしょう。
出版は、2人の子供が亡くなってしまう前に行われていて、当時は女性が本を出版するのは難しかったため、名前を伏せて出版を行いました。
最初の出版から数年後に、2人の子供を亡くし、立て続けに夫であるパーシーをも亡くしてしまい、フランケンシュタインの改訂版を出版しています。
その後「最後の人間」という自書伝に近い小説を出版し、フランケンシュタインをさらに改訂し、数年後に亡くなります。
数奇な運命に翻弄されつつも、フランケンシュタインに自分を重ねていたのでは?と思える部分もあります。
この人生を知りながら、改めてフランケンシュタインを読むと、違った見方ができますね。
何度も映画化、ミュージカル化されている
フランケンシュタインは非常に根強い人気を保っていて、何度も映画化やミュージカル化されて、多くの人に愛され続けています。
多くの作品の中でも、人気の映画をご紹介していきます。
フランケンシュタイン(1910年初の映画化)
初の映画化となったフランケンシュタインですが、スタッフへの未払いなどによって公開までスムーズに行きませんでした。
一時フィルムは無いものとされていましたが、後に発見され1970年代に公開されました。
トーマス・エジソンが撮影に参加したと噂されていましたが、名前貸ししただけであるとされています。
紆余曲折ありましたが、これが記念すべき最初の映画化でした。
フランケンシュタイン(1931年ユニバーサル制作)
世界的な話題となった、フランケンシュタインの映画ですね。
年代的に、最初の映画の公開よりも先になりました。
この時に描かれたフランケンシュタインが、頭が角ばっていて、ボルトが刺さっているというイメージの原型となった作品です。
また、この作品がきっかけとなって、怪物=フランケンシュタインの名前の間違いが定着したとも言われています。
フランケンシュタインの花嫁
1935年にユニバーサルから公開された映画です。
シェリー夫人が実は、小説フランケンシュタインの続きを作っていたという場面から、物語はスタートします。
またもフランケンシュタインは悩むこととなりますが、花嫁とはどのような結末を迎えるのでしょうか?
原作とは違うものですが、ファン必見の映画です。
まとめ
フランケンシュタインは、数奇な運命を持って生まれた人造人間でした。
著者シェリー夫人の体験から紡がれた物語であるために、リアルな描写と、繊細なフランケンシュタインの感性が融合した、素敵な作品です。
一度、原作を読み直してみるというのも良いですね。
ぜひ参考にしてみてください。

他の都市伝説もご覧になってみてくださいね。


【参考サイト】
wiki
フランケンシュタイン(wikipedia)
メアリー・シェリー(wikipedia)
フランケンシュタインの怪物(wikipedia)
フランケンシュタイン・コンプレックス(wikipedia)
ヴィクター・フランケンシュタイン(wikipedia)
フランケンシュタイン城(wikipedia)
パーシー・ビッシュ・シェリー(wikipedia)
最後の人間(wikipedia)
フランケンシュタイン(1931年の映画)(wikipedia)
フランケンシュタインの花嫁(wikipedia)ピクシブ百科事典
フランケンシュタイン(ピクシブ百科事典)
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